北海道発の健康科学産業創出を目指して
北海道を健康科学産業の基地に
Bio-Sは、この4年間、加齢や生活環境の変化によって衰える代謝、免疫、認知の3つの領域において、特徴的な機能評価に関する研究を実施し、食材を評価し、関連する疾患過程を反映するバイオマーカー探索を行ってきました。これらの成果を基礎として、我々が目指す、食・バイオの国際的機能性評価基地のイメージが漸く見えてきた所です。
地域構想とBio-S
北海道フードコンプレックス国際戦略総合特区構想は、札幌・函館・十勝での食関連クラスター活動を踏まえた地域の全体構想と言えます。道央地域が目指す健康科学産業クラスター形成には、食品加工産業の高度化、評価受託産業・健康サポート産業(保健・食育等の人材育成、健康コンサル)の育成・創出が必要であり、それらを様々な形でサポートする仕組みが必要です。Bio-Sでは、その様な仕組みの原型を作り、地域のクラスター形成に貢献しようとしています。
実施状況
平成22年度は、「科学的イノベーション」「研究から事業化へ」「フードイノベーション拠点形成」「人材育成」「国際展開」という5つの視点から大きく前進し、道央の地域でフードイノベーションを連続的に創出する目処を立てつつある所までまいりました。即ち平成21年度末に実施した「食の研究開発に、より焦点を当てて事業化を目指す」という研究テーマポートフォリオの見直しの成果が出てきたと言えます。
○科学的イノベーション:脂質研究において幾つかのブレークスルーがありました。認知症おいて新しい血漿バイオマーカー候補を見いだしつつあります。
○研究から事業化へ:蛍光色素「ポラリック」を商品化し、大学発ベンチャーであるポラリス・テクノロジー(株)を設立いたしました。腸管機能評価研究の中から地域の企業の連携により腸内環境改善という研究受託サービスの取り組みがスタートいたしました。黒大豆である黒千石を用いた様々な商品作りが、地域の企業主導で進められました。
○フードイノベーション拠点形成:「抗酸化分析センター」「るもいコホートピア」「健康情報科学研究センター(食材のヒトでの臨床評価)」「高度脂質分析ラボ」という4つの評価拠点作りに取り組み、それぞれ動き出しました。上記の「腸内環境改善研究センター」含めれば5拠点とも言えます。
○人材育成:Bio-Sフードサイエンスカレッジ運営を通じて食のクラスター活動を担える人材育成を行っております。
○国際展開:自立化の為には、グローバルな市場を踏まえた地域での研究開発が必要です。海外のフードクラスター(ビタゴラ、フードバレー)及び食関連の機関(AFMNET、植物&食品研究所)と交流し連携を深めてきました。これらの活動は、サイエンスの様々な進捗と結合して道央の地域でフードイノベーションを連続的に創出する仕組みと言えます。
サイエンスと市場ニーズのマッチング
大学における研究イノベーションの成果は、もっと社会に還元することが求められていると言われています。企業との共同研究の機会の中で、サイエンスはグローバルな市場ニーズに刺激を受けながら更に発展する事が出来ます。産学官共同プロジェクトであるBio-Sは、そのメリットを最大限に活かし、新たな産業(健康科学産業)の創出につなげようとしております。Bio-Sの取り組みは、道内・道外の企業に注目していただき、実用化に向かっているプロジェクトも増えております。“サイエンスと市場ニーズのマッチング”を更に目指していきたいと思います。
鈴木 文夫
協和発酵工業(株)[現 協和発酵キリン(株)]医薬探索研究所所長、
常務執行役員(医薬企画管理本部長)、
Kyowa America Inc 社長を経て、2007年7月より現職。